苦労した方が記憶に残る
夕食の支度をする時、いつもラジオを聞いている。
本当はテレビをつけていたいけど、遠くて音が聞こえないのだ。
そのラジオでココアの話題があがっていた。
ココアと聞いて思い出すことがある。
昔よく、チケットを取るためにチケットぴあの前に並んで夜を過ごしたことだ。
仕事帰りにすでに並んでいる人がいて、そのまま列に並んだこともある。
毎回だいたい同じ顔触れなので、だんだん顔なじみになりチームのようになってくる。
トイレは前後の人に断りをいれて交代で行った。食事も交代で。
寒い季節はダンボールをお尻に敷いたり凍え死なないようにみんなで歌ったりして夜を明かした。
この時、身をもって「紙は温かい」というのを学んだ。
そうやって苦労して夜通し並んで、チケットが取れなかったこともある。
取れれば嬉しいが、取れなかった時は疲れも2倍だ。
そのチケット取りが終わると、向かいにドトールコーヒーがあって、ちょうどドトールがオープンするので、そこで朝食を兼ねてココアを飲むのが恒例だった。
そのココアの美味しかったこと!!
冷えきった体に温かいココアが本当に芯から沁みるようだった。
今はもう並んでまでチケットを買うことはなくなってしまったけど、時々あの時の甘くて温かいココアが飲みたくなる時がある。
飲んでみたりするけど、あの時のような感動はない。
あの甘い感動は、あそこまで疲れ切った状態で飲んでいたからだったのかもしれない。
私が仕事も遊びも全力でやっていた頃だ。
今も変わらず観劇には行くけど、あの時ほどの真剣さはない。
記憶にも残らない。
あの時の美味しいココアがまた飲みたい。