小さい泥棒
最近、やたら昔のことを思い出すのだ。
なんだろうな、死期が近いのかしら。
ネタにもなるのでちょうどいいが。
それは小学校1年か2年生の時のこと。
私は何かの係になっていて、それをみんなに達成してもらうために色々考えていた。
何の係だったかは全く思い出せないのが残念だ。
で、達成できた人にご褒美のカードを作った。
可愛いイラストをプリントしたもので、これがクラスメートに大好評だった。
みんなそのカード欲しさに頑張って「何か」を達成してくれた。
常に何枚かまとめて机の下に入れておいたのだが、ある日それが丸々盗まれてしまった。
それを盗まれたのは誰か分かっていた。
後ろの席の子だ。
その子がそのカードをまとめて持っていたのだ。
頑張って集めても、そんなに持っているはずがない。
そして決定的だったのはその子に「カード知らない?」と聞いた時、ものすごく分かりやすい動揺を見せたからだったと思う。
小1か小2で盗みをすでに知っているというのも問題を感じるけど、当時の私は盗まれた怒りよりも、悲しみの方が大きかった。
カードはまたプリントすればいい。
そんなことより、他の子は頑張って目標を達成してやっと手に入れることができるカードを、あっさりと手に入れてしまったということに、幼いながらも落胆した。
そして、身近な人にも自分に害を与えてくる人がいるというのを初めて知ったかもしれない。
それからその子とは距離を置いた。
中学も同じだったけど、一言も話した記憶がない。
クラスが多かったから建物が違ったかもしれない。
今はもう大人になって、結婚して子供もいるかもしれない。
きっとそんなことはすっかり忘れているだろう。
でもされた方は覚えてるんだな。
いじめもした方は忘れるけど、された方は覚えてる。
子供に「人の物を盗んじゃだめだよ」と教えているんだろうか。
その時、少しでも自分の胸がチクリとなってくれたらいいなと思う。